ベルの家出 〜第120回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖
「歯科医師夫婦のつれづれ手帖」は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。2024年4月の移転後も、なんだかんだ言って続いています。
ルールは2つだけ。
ルール1 必ず毎月、どちらかが書く
ルール2 内容は、歯科治療以外のこととする(時々ルール違反あり)
今回は、前回に引き続き猫の話題。
子猫をつれてちょくちょく我が家に顔を出す野良猫「ぶてちゃん」に憧れたうちの飼い猫「ベル」がとった行動とは・・・?
第120回 ベルの家出
先月、我が家の地域に何年も暮らすノラ猫の「ブテちゃん」が、うり二つの子猫を連れて遊びにきた話を書きましたが、そのあと我が家では、ちょっとした事件が起こりました。
子猫のあまりの可愛さに、来るたびに大騒ぎをして動画を撮ったり餌や水をあげている私たちをみて嫉妬したのか、我が家の飼い猫、「ベル」 がある日の朝、玄関のドアを開けた途端に逃げ出したのです。
外にはいつものノラたち。ずっと室内飼いだった我が家の箱入り娘は、庭で興奮してしまい、捕まえようにも捕まえられません。好きな餌を片手にいくら落ち着かせようにも、「シャーッ!!」と別猫のような声をだして、とうとうどこか遠くに逃げていってしまいました。
さて困った!
途方に暮れ、夫と「餌やったお前がわるい」「ベルの前で騒いだお前が悪い」とののしりあい。 そのうち、「たぶん、自由なノラ猫に憧れて、外の世界を見たかったのだろう」という結論に達し、もう帰ってこないかもしれないな、と半分諦めながら、何かできることはないかと画策していました。
ネット情報によると、完全室内飼いの猫を外に逃してしまうと、帰ってくる確率は低い。ちまたには猫ハンターなる、逃げた猫を探す専門の業者までいるらしいのです。
猫ハンターの技をネットでみたり、雫石の動物愛護団体「どうぶつ命の会」に相談したりして、とにかくドアや 窓を全て開け放し、匂いのついたトイレの砂や毛布などを入り口においてみました。
さらには、ノラ猫のネッ トワークはすごいから、彼らに情報提供を呼びかけるとよい、という嘘のような情報を得て、ノラ猫ブテちゃんに、「うちのベルを見つけたら早く帰るように言ってちょうだい」と大真面目に声がけしました。
その甲斐あってか、家出から10時間後。 ベルは、首輪をなくしていたものの、怪我もなくすごすごと玄関から帰ってきて、 気まずそうに2階に上がってしばらく爆睡しておりました。隣の芝生は青く見えると言いますが、飛び出してみたはいいけれど、厳しい世間の荒波にさらされ て、身も心も疲れ切ったのでしょう。 ともかく、ベルの家出事件は一件落着し、ノラ猫ぶてちゃんには、ベルの見えないところで「ありがとう」と餌をあげました。やはりノラの逞しさには、かなうわけはないのですよ。 (文 松浦直美)
(写真は慌てて作ったチラシ。使う前に帰ってきたので、使わずにすみました。)