拝啓ノラ猫さま あなたはエライ!!〜第112回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖〜

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。

ルール1 必ず毎月、どちらかが書く
ルール2 内容は、歯科治療以外のこととする(時々ルール違反あり)

第112回 拝啓のら猫さま あなたはえらい!!

 以前、このコラムで、我が家の周りを元気に闊歩している野良猫の話をしたことがありました。

最近見ないな、と思っていたのですが、なんとある日,子猫を5匹も引き連れて、いきなりうちのデッキの下に引っ越してきたのです。「ニイニイ」という子猫の鳴き声に驚いて外に出る と、小さな子猫がふらふらと、うちの庭を歩き回っているではないですか!!

そこで、私の頭はぐるぐると回転します。

「どうしよう?」「可愛い・・(欲しい)」「今なら、捕まえられる」。

実はこの母猫、今までも 何度も子供を産み、うちの周りに子供を連れてきたことがあります。私も何度も捕獲を試みましたが、すばしっこくてつかまりやしないのです。

でも、今度 はまだ生まれたばかりのようで、ふらふらしている子猫は容易に捕獲できそう。

しかし・・・なんだかいつもと様子が違い、何匹かは弱っている感じもあります。

思い切ってうちの猫の餌をあげると、まだ離乳も完了していないような子猫たちが群がって、必死に食べています。
子猫1匹くらいなら育ててもいい・・・フラフラしている奴を捕まえることは本当に容易そうで、実際に手にとってしまいました。

写真はイメージですが、母子とも、とても似ています!!

でも、こんな小さな子猫を、母親から離していいのか??とまた逡巡します。

餌をやってしまったし、全員に居つかれても困る・・・悩んだ末、市役 所に電話して母親ごと保護してくれないか聞いてみました。

しかし、市で保護するのは母猫のいない弱っている子猫のみ。

保護して少し養育し、必要なワクチンなど済ませた上で、保護猫活動をしている団体に引き取ってもらうか、母親ごと地域猫として育てるという選択肢を提案されました。それはそれで、自費で避妊治療した後、育てるのであれば町内会の数名以上の賛同を得るなどの手続きが必要とのことで、結構大変そう。

1日中あれこれ考えていたら、なんと次の日。母猫と5匹の子猫は、あっという間にデッキの下から姿を消してしまいました。もう一度、水と餌を置いてみましたが、その後食べにきた様子はなく、アリだけがびっちりとたかっていました。

弱っていた子猫と、いつになく多頭の子育てに疲れていた様子の母猫。とうとうどこかで行き倒れてしまったのかもしれない。今年は本当に暑い夏だったしなあ・・・と心を痛めていました。

ところが・・・です。

それから1ヶ月ほどたったある日のこと。朝のジョギングにでた夫が、うちから数百メートルほど離れた空き家の庭を、元気に走り回る子猫と、例の母猫を発見。「お前たち、生きていたのかあ!!」と思わず叫んでしまったそうです。

拝啓、名もない野良猫様。

あなたは本当にすごい。餌をあげた我が家に固執することもなく颯爽と誇り高く姿を消し、そしておそらく似たような人間から餌を施され、子猫を元気に育てている。もはやぐうの音も出ません。 (文 松浦直美)

 

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