スペイサイド〜憧れのウィスキー街道へ 第40回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖
歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 かならず毎月、どちらかが書く
2 内容は、歯科治療以外のこととする
第40回 スペイサイド〜憧れのウィスキー街道へ
この夏、もうすぐ喜寿を迎える母と一緒に、思い切ってスコットランドをめぐる旅に出かけました。
母と一緒の旅行など、思えば10年以上行っていませんでした。スコッチウィスキーが大好きな母は、1度、美しいスコットランドにある本場の蒸留所を見てみたい、と思っていたのです。
年齢を考えても、エコノミークラスでの長時間飛行を考えても、そろそろ最後のチャンスかな、と思い、首都エジンバラから2泊3日、マイクロバスで「スペイサイド蒸留所めぐり」というオプショナルツアーに参戦することにしました。
世界中からウィスキー好きが集まり、蒸留所の内部を見せてもらい、試飲をするというツアーは、もちろん和気あいあい。ドイツ、カナダ、インド、そして地元スコットランドのメンバーとともに、最後のグレンリビット蒸留所についたころにはみんなこの笑顔です。
スペイサイド(スペイ川のほとり)という名の通り、スペイ川沿いに多くの蒸留所があるこの地方は、この時期ハイランド特有のピンク色のヒース(エリカ)、黄色いゴースが咲き乱れて夢のような景色です。
スコッチにも地域によって特色があり、「マッサン」の主人公が滞在したのはもっと西の地域で、強い「スモーキーフレーバー」が特徴。スペイサイドはピートをあまり使わないので香りもフルーティ。どの蒸留所も、自分たちの仕事とウィスキーに強い誇りを持ち、若者も年配もスタッフは知識、技術ともに超一流です。
ある蒸留所内を案内する年配の女性が言いました。「ここに来た時、私はウィスキーに興味もなかったし何も知らなかった。でも、知れば知るほど、もっと知りたくなり、いくつになっても興味はつきないんです」。
麦、水、酵母の3つだけを使い、手間と技術であの深く複雑な香りを生み出すウィスキー。世界中にファンがいる大きな理由が、この荒涼としたスコットランドにありました。(文 松浦直美)