【ミニマル歯科治療】審美歯科と美容治療。その相性は?
こんにちは。歯科医師の松浦直美です。
英語の得意な方でも、「Tweakement」(トゥイークメント)という英単語を聞いたことのある方は、日本人ではほとんといないのではないでしょうか。
かくいう私も、実は海外の審美歯科のコースを受けるまで、聞いたこともありませんでした。
「Tweakment」というのは、直訳すると「微調整」という意味。
美容医療業界では、トゥイークメント といえば、「ボトックス」「ヒアルロン酸」「スキンピール」「レーザー治療」などの美容医療のことを指し、いわゆる「切らない治療」です。
Tweakment(微調整)・・・なるほど。
侵襲性の少ない治療を程よく適宜行うことで、自然な形で良い状態に戻し、大掛かりな治療を避けていこうという考えです。
・・・なんだか、聞いたことありませんか?
はい、このブログでもよく話題にしている「ミニマルインターベンション(最小限の侵襲)」による歯科治療、と少し似ていますよね。
そう思う方は海の向こうにもいたらしく、一般の人にも分かりやすいように、「Tooth Tweakment(トゥーストゥイークメント)」という呼び方で、このミニマルな歯科治療のことがさまざまなマスメディア(特に女性向けの雑誌など)で紹介されているようです。
美容医療の「ボトックス」や「ヒアルロン酸」と同じように、歯を抜いたり削ったり、といういわゆる「切った貼った」をせずに行うミニマルな治療として筆頭に挙げられるのは下記の3つ。
ホワイトニング
矯正治療の一部(歯を抜かずに行う軽度から中等度の歯並びの矯正)
白い詰め物(コンポジットレジン)を使用したダイレクトボンディング
この3つは、それぞれ単独でも大きな変化が望めますが、なんと言っても効果が大きく飛躍するのは二つ以上を組み合わせた時。
美容のトゥイークメントと同じく、それぞれの得意分野を組み合わせることで、本当に大きな相乗効果が得られるのです。
そして、さらに驚くことに、これらの「Tooth Treakment(ミニマル歯科治療)」をはじめとした審美歯科に、本家のトゥイークメント、ボトックスやヒアルロン酸注入などを組み合わせる複合的な治療が、海外では歯科医院でも普通に行われています。
「予防歯科」から始まった、審美歯科の大学院でのカリキュラムの一番最後あるのも、この「Tweakment」、ボトックスとヒアルロン酸です。
歯を綺麗に整えたら、最後はこれら「Tweakment」で総仕上げ、というわけです。
法令線や口元のしわ、さらには唇の厚さなどを整えるこのような治療は、実は歯科とはとても相性がいいのです。口元の美容医療は、噛み合わせを整えたり、矯正治療やセラミックの被せ物によって、ほうれい線の深さや唇の厚さに影響が出る可能性もある歯科医療と一緒に考えた方が、効果的かつ効率的なことが多いからです。
例えば、矯正治療で「でっ歯」の治療をした場合。成人になってからの治療では、目立たない部分の歯を抜いて、そのスペースを使って歯を奥に引き入れていくことで、でっ歯を改善することがあります。若いうちはあまり目立ちませんが、ある程度年齢を重ねてから治療をした場合は、ほうれい線が少し目立って見えることがあります。慎重な矯正医であれば、横顔の写真を記録して、どのくらい口元をひくのか、年齢によって変えていることもあるくらいです。
入れ歯も同様で、明らかに口元がでっぱっていて見栄えが悪かった入れ歯を「本来の」位置に作り直すと、なんとほうれい線が目立ってしまい、「以前の出っ歯の口元に戻して!」なんていうことも。ほうれい線がほんの少し深くなることよりも、出っばでいることの方を選ぶ方もいらっしゃる、ということです。
このような時に、ほうれい線を浅くするヒアルロン酸を歯科で施術することができれば、美しい歯(入れ歯含む)と、若々しい口元、どちらも諦めずにすむ、ということになります。
歯科におけるボトックスやヒアルロン酸を手がけているところは多くあるかと思います。しかし、日本では現在のところ、歯科医院でどこまでの美容医療が認められるのか、はっきりとした基準がなく、当院ではまだそのような目的での導入は考えていません。
しかし、歯科治療におけるそのような不可避な口元の変化がある、ということを理解し、気になる場合は美容皮膚科などでの対応を考えることも、選択肢の一つになるかもしれません。本当は、歯科で複合的に対応できるのが理想かと思います。
ボトックスについては、しわ消しではなく、噛む力が強すぎて歯や顎の関節に問題が起こっている方への咬合筋の動きの軽減のために使用することがあります。美容とは違いますが、歯を守る上ではとても意義があり、適用する歯科医院は増えてきました。
そして、副産物のように、この治療をうけることで、咬筋という最も大きな筋肉の動きが抑制されることで、いわゆる「えら」が小さくなり、お顔立ちがスマートになることもあります。
初めて聞いた英単語「Tweakment」。
その恩恵は大きく、歯科においても、大切な役割を果たしてくれることがわかってきました。
歯を大きく削らない治療と、皮膚を切らない美容医療。これからこのような「微調整」的な治療が広まっていくことで、年齢を重ねた口元も、自然に魅力的に変わっていくことを期待せずにはいられない今日この頃です。