【大人の予防歯科】定期メインテナンスにおける適切なレントゲン検査の頻度とは?

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

先日、当院の患者さんで、私の友人でもある50歳の女性が、「歯が痛い気がする」といって受診しました。

彼女の前回の定期メインテナンスは8月。そう、たった2ヶ月ほど前です。

歯科衛生士の記録を見ても、なにも心配なことは書いてありません。しかも彼女は、歯磨きが上手で、定期的にホワイトニングも行っているいわゆる「歯の意識高い系」の女性。

「またストレスで歯ぎしりでもしたんじゃないの」といいながらも、念のため、レントゲン写真を撮ることにしました。

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レントゲン写真に写っていたもの

レントゲンに写っていたのは、思ってもいなかった大きな黒い影。

そう、「虫歯」です。

一番疑っていなかったものが写っていてとても驚きました。6倍に拡大する拡大鏡を使って診療している私にも、まったく見えなかったのです。しかも、その虫歯は、歯の内部にある神経ギリギリまで広がっていました。

 

ではこの虫歯は、たった2ヶ月で急に出現し、神経の近くにまで広がったのでしょうか?

いいえ、それよりも前から、少しずつ、進んでいたはずです。

この方が、長い間虫歯ができることがなく、歯磨きも上手でいつも綺麗な歯をしている、という先入観もあり、唾液検査などのリスク検査を行わなかったり、適切な時期にレントゲン検査をしていなかったことが原因と思います。

定期メインテナンスにきていれば安心、とはいかない現実

定期メインテナンスは、生涯にわたって続けていただきたい大切な習慣です。
その大きな目的は、虫歯や歯周病を起こしてしまう細菌の塊「バイオフィルム」が大きく成長しないうちに除去すること。

これだけで、歯科における2大疾患(虫歯、歯周病)に対しての大きな予防になることは広く知られた事実ですが、実際は定期メインテナンスに真面目に通っていただいているにもかかわらず、虫歯になってしまう方も、いらっしゃいます。

さらには、今回の私の友人の例のように、虫歯になっていることに、プロである歯科衛生士や歯科医師でさえも、診ただけではわからない、ということもありうるのです。

なぜ、定期的に歯科に通っているのに虫歯になってしまう方がいらっしゃるのか。それが、「虫歯のリスク」です。

プロが見てもわからない虫歯を発見する方法

見ただけではわからない虫歯を見つける方法は二つあります。

一つは、「ダイアグノデント」という虫歯発見器。特にお子様の永久歯は削りたくないので、当院でもこれを駆使して、色がちょっと黒く着色しているだけなのか、中で虫歯が進行しているのかを確認しています。レーザー光線を当てるだけなので、放射線の心配もなく、痛みも全くありません。

もう一つは、レントゲン検査。

やはり確定診断には、レントゲン検査が必要です。特に、一度治療した歯や、歯と歯の間の小さな虫歯は、視診やダイアグノデントでは発見は難しく、レントゲン検査が必要になります。

レントゲンを毎回撮るのはいや!!

それは当然ですよね。

目でみえない虫歯ができることがあるからといって、バイオフィルムをスッキリ落とすために歯科医院にきているのに、毎回毎回レントゲン検査をするのは憚られるのは、われわれ医療従事者側も同じ。放射線の被曝が気になる方もいるでしょう。

ちなみに、被曝に関しては、歯科におけるデジタルレントゲンの放射線量はごくわずかです。

当院の機械では、一枚のレントゲン写真を撮るのに浴びてしまう放射線量は0.01mSvほどです。ADA(アメリカンデンタルアソシエーション)のまとめでは、レントゲン機器により違いがあり、平均すると0.04ほどです。0.01mSvの被曝は、東京からニューヨークまで飛行機で往復する際に浴びる放射線の20分の1。肺のレントゲン検査の半分、肺のCT検査の6200分の1です。(数値はADA HPより)

妊婦さんであっても、歯科におけるレントゲン検査で健康に害があることはないとされています。

とはいえ、人様に放射線を当ててよいのは、他の病気同様「その利益が不利益を上回る場合」だけ、というのが医療の基本。

そこで、先ほどから頻出しているADA(American Dental Assocation)の「歯科におけるレントゲン検査の指針」が役立ってきます。定期メインテナンスの際、どのくらいの頻度でレントゲン写真を取れば良いのかが、よくわかります。

やはり、リスクに応じたメインテナンスとレントゲン検査が必須

当院が推奨する「オーダーメイドメインテナンス」とは、その方のリスクに応じたメインテナンスやホームケアを提案し、虫歯や歯周病の発生を防いでいきましょう、というものです。

リスクを測るかなり正確な方法としては、通常の定期検査に加えて、唾液検査を行っています。できれば、初めは1〜2年に一度、その後は2〜3年に一度くらいの頻度で、唾液検査を繰り返してもらえれば、正確にリスクを把握することができるのでおすすめです。

唾液検査をしなくても、ある程度のリスクの高さは臨床的にも判断はできます。しかし、40代以降の女性は特に、急激な唾液量の変化などがありますので、できればやはり、唾液検査を時々行うのが正確なリスクの把握には良いでしょう。

ADAによると、成人の場合、虫歯リスクの低い方であれば、2年から3年に一度の定期メインテナンス時のレントゲン検査を推奨しています。

虫歯リスクの高い方は、半年から1年半に一度レントゲン検査をし、目に見えない場所に虫歯ができていないかを確認することを推奨しています。

当院では、唾液検査などがなく、正確なリスクの把握ができていない方には、1〜2年ほどの間隔で、レントゲン検査をお願いしていますが、これはご本人のご希望次第にしています。

「何か症状が出たり、先生の目に穴が見えたら、でいいわ」といって何年もレントゲンを受けずに検診だけ行っている方もいます。これはこれで、患者さんの選択ですし、定期メインテナンスにきていれば、治療が必要な虫歯があってもあまり大きな治療にならないことが多いからです。

しかし、多くの方は、1〜2年に一度、すべての歯のレントゲン検査を受けることを選択されます。

まとめ

予防歯科の世界標準としては、アメリカやヨーロッパのように、リスクの把握とそれに合わせた頻度の定期メインテナンスおよびレントゲン検査のガイドラインを設定している国もあります。

しかし、日本の保険治療では特にそのような指針はなく、やり方は各医療機関に委ねられているのが現状です。

定期メインテナンスに通っている方の虫歯の見落としは歯科衛生士もショックを受けてしまいます。かといって、すべての方に半年ごとにレントゲン検査をするのも現実的ではありませんん。

大切なことは、患者さんに上記のお話を理解していただき、リスク検査を受けたりレントゲン検査を受けて、積極的に予防していくのか、または数ヶ月に一度の定期メインテナンスにまずは忘れずに通院するところから始めるのか、をご自分で選んでいただくことかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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