大人のインビザラインは、人生の花を開かせる!

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

昨日ご逝去が報じられたエリザベス女王。イギリスには私もとても深い思い入れがあるので、ニュースを聞いたときには驚きと、一つの時代が終わってしまったような、喪失感を味わいました。

女王といえば、2020年、セントラルロンドンに「Royal National ENT and Eastman Dental Hospitals」という耳鼻科および歯科の最新設備を備えた施設が誕生した際に視察に訪れ、歯科で矯正器具を付けたばかりの男の子に、

「私もワイヤー(矯正装具)をつけていましたよ。幸い、もうかなり昔のことになりますけれどもね。」
「最後はやってよかったと思うでしょう。」

と話しかけたというエピソードがあるそうです。(2020年2月21日 Excite ニュース)

イギリスでは、歯列矯正は保険が効くと思っている方も多いようですが、保険が効くのは18歳までに、かなり厳しい診査を行って、重度の歯列不正が認められた場合のみ。その「基準」に当てはまらない多くの小児は、通常の費用を支払うことになります。当時94歳の女王が子供の時代に矯正治療を受けたとは、さすが英国の王室ですね。高い意識と、十分な経済力があったのでしょう。

さて、矯正といえば、今日は、当院でも問い合わせの多い「インビザライン」による矯正治療のお話です。

そうそう、今日は、こちらのブログに患者さんの「綺麗さん」に登場してもらうことになりました。綺麗さんは、まだまだキレイを追求していきたい47歳の女性です。

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綺麗さん

看護師の綺麗です。実は最近結婚しまして。。。ずっと気になっていた歯並びを、直したいと思っています。

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綺麗さん

目立つのがいやで、ずっと矯正に踏み切れずにいましたが、最近インビザラインという見えない矯正器具があると聞いて、興味を持ちました。

では、綺麗さんのご指定の「インビザライン」。最近では芸能人や、我らが花東(花巻東高校)出身、エンジェルズの大谷くんなど、多くの有名人が使っていることで、注目度も上がっているのではないでしょうか。一体どんな治療なのでしょうか。

Contents

インビザライン矯正とは

インビザラインというのは、透明なマウスピース型の矯正装置を歯にはめて、少しずつ、歯を動かしていくシステムです。どんな治療法なのか、という概要は、アメリカに本社を持つインビザライン社の日本支社が、わかりやすいホームページを開設していますので、そちらをご覧になるのが手っ取り早いかと思います。まずは、概要を確認してみてください。

インビザラインジャパン

付けていることを忘れてしまうほどの軽さと目立たなさ。この透明な装置が「アライナー」です。

早い話が、ほとんど目立たない透明の装置で、食事や歯磨きの時には外すことができるので清潔で、原則としてどんな年齢の方でも、またどんな歯並びの方にも適応できる、というシステムです。

アライナーと呼ばれる透明な装置を、1週間に一回ほどの頻度で取り替えていくので、いつでも装置は新しく清潔です。

今や、世界中で圧倒的にナンバー1のシェアを誇っているのは間違いなく、スマートさの上でも、装置としての実力の上でも、インビザラインははメリットだらけに見えます。

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なおみ先生

インビザラインのホームページは、世界中の言葉に訳されて、公開されていますから、とても見やすいしわかりやすいですよね。

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綺麗さん

ホームページはもう見ているんです。ただ、実際にどんなものなのか、料金はいくらくらいなのか、もう少し詳しく知りたいです。

ホームページでは分からない、インビザラインを受ける前に知っておいてほしいこと。

どんな治療にも、デメリットと思われる点や、治療を受けるご本人がしっかり理解してほしい点があります。まだ歯科医院に相談するか迷っている、という方のために、私がインビザライン治療を受ける方に必ずお話ししている内容のうち、特に大切なところをご紹介いたします。

*料金

費用は気になりますよね。矯正治療は自由診療(保険外)なので、歯科医院や地域によって、料金の設定は様々です。症状によって料金を変えていることも多く、軽度の方で40〜50万円前後、重度の方だと100万円前後の費用になっている歯科医院が多いです。

そのほか、精密検査の料金として3〜6万円程度、治療終了後の保定装置の料金が1枚につき1〜2万円程度かかることが多いでしょう。

また、初期費用を少し安く設定し、毎回の来院時に費用がかかる、または初期費用は高めでも、その後の来院時の費用は全くかからないなど、料金設定は本当に様々ですので、文書にてしっかりと説明を受けることが大切です。

*治療期間

症状により、3〜4ヶ月の短期間で済むこともあれば、2年以上の期間がかかることもあります。簡単な診査でおおよその治療期間はわかりますので、インビザラインを行っている歯科医院に相談してみましょう。

忘れてはいけないのが、治療終了後の「保定」期間。後戻りしないように、保定装置を装着する期間です。理想は生涯、最低でも3年ほどの装着をお願いしています。初めの半年から1年を過ぎたら、夜間のみの装着になります。

*1日の装着時間

透明なアライナーの装着時間は1日20時間以上。原則として、食事と歯磨きの時間以外は装着が必要です。
治療期間ば食事のたびにはずす、つける、を繰り返します。水以外の、コーヒーなどの飲み物を飲む時も一緒です。友人との会食の時などは、不自由を感じることがあるでしょう。面倒だ、という考えもありますが、はずしてしまうため、装置を気にせずに好きなものを食べられる、そして装置を気にせずにしっかりと歯磨きできるというのは、大きなメリットでもあります。

*アライナーを入れるたびにやってほしいこと

アライナーを装着したら、チューイーと呼ばれる硬いスポンジのようなものを、5〜10分、しっかりと上下の歯で噛み噛みしてもらいます。これは、アライナーをしっかりと歯に適合させるためで、とても大切なプロセスです。これも、毎回の食事のたびに行わなければならないので、面倒だと感じる方は多いでしょう。

*歯につける白いものの正体

歯を動かすために、「アタッチメント」と呼ばれる白い材料を、歯の表面に付けます。白いのでそこまで目立ちませんが、症状によっては前歯に着くこともあります。こちらは、原則として一回取り付けたら、治療終了までついています。毎回のチェックの際に、取れていれば付け直しをします。

*歯を削る!?

歯を動かすスペースを確保するために、IPR(Interproximal Reduction)と呼ばれる処置を行います。これは、歯の表面をほんの少しだけ、切削することです。痛みは全くない、ごく表層の切削です。どんな矯正のシステムでも行うことはありますが、インビザライン治療の場合は他のシステムにくらべてこのIPRを行うことがやや多くなると言われています。もちろん、症状や年齢によって、IPRがいらなかったり、ごく少ない部位で済むこともあります。

このほかにも、注意事項はありますが、上記のが、インビザライン治療を始める上でまず知っておかなければならない点です。特に初めの2点は、患者さんにしっかり守っていただかなければ、せっかく始めた治療が進まなかったり、中断になってしまったり、初めからの矯正費用が再度かかってしまうこともあり、注意が必要です。

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綺麗さん

なるほど〜。自分でも、色々とやることがあるのですね。看護師の私は勤務中は忙しく、私は食事も不規則なことがあるのですが、チューイーを噛むなどしっかりできるか心配です。

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なおみ先生

取り外しは、慣れてしまえばそんなに負担ではないようです。チューイーは、10分ほど噛み続けることが理想ですが、忙しい時は3往復ほどでも良いですよ。

おとなのインビザラインには、こんな “壁” がある。

インビザラインは、いまや永久歯が生え始めたばかりのお子様から、60歳を超えた方まで、多くの年代で使用することができる優れた矯正装置です。全世代における一般的な注意事項ややや面倒な点は、先ほどお話した通りです。

ここではさらに、40代以上の「おとな」の方に立ちはばかることがあるインビザラインの壁をお話しします。

*おとなのお口の中には修復物がいっぱい!

長い人生を生きてきた大人のお口の中は、すでに虫歯治療による詰め物や、銀歯、セラミック、そしてブリッジ(抜いてしまった歯の両脇の歯を使って歯をつないだ大きな被せ物)が入っていることが多く、アタッチメントの接着が難しかったり、取れやすかったりして治療に影響を及ぼすことがあります。

さらに、インプラントという人工歯根を埋めている方は、インプラント部分は矯正治療では全く動かないため、治療結果に制限が出てしまったり、インプラントの上部を作り替えることが必要になる場合もあります。

*骨が硬い

骨が硬くなってきているおとな世代は、若い年代に比べ、どうしても歯の動きが遅い傾向があり、想定していた期間よりも長くかかることがあります。しかしこれは個人差の範囲であることも多く、一般論として頭に入れておく程度のお話です。

*歯肉が下がってしまう「歯肉退縮」が若い世代に比べると起こりやすい。

大人の女性の歯並びの悩みで多いのが、下の前歯のガタガタ。
いつも茶渋などの汚れがついて不潔な感じを与えたり、歯石がつきやすかったりして、長年悩んでいる方がとても多いのです。このような方が矯正治療を行うと、歯肉がやや退縮して、歯の根元に隙間ができたように見えることがあります。もちろん、症状により個人差は大きく、気にならない程度のことも多いですが、退縮が予想される場合は、根本の隙間を埋める治療など、その後の対応のオプションについても考えておくことも必要になるでしょう。

上記は、あくまでも高校生や30代くらいまでの若い世代に比べての一般的なお話です。矯正治療は何歳からでも始めることができることは確かですが、40代以降の矯正は、やや不利になる点はどうしても出てきます。

それでも知っておきたい。おとなのインビザラインの使い方。

それでも、おとながインビザラインを始めるメリットはたくさんあります。

何よりも、長年のコンプレックスから解放されるワクワク感。これは、お母さんに歯科医院に連れてこられ、「将来のためだよ!」「もっと綺麗になるためよ」などと言われて、矯正装置をつけさせられる子供たちとは圧倒的に違う感情でしょう。

見た目の改善だけではなく、歯を清潔に保ちやすくなり、歯周病も予防しやすくなるなど、これからの人生に花を添えてくれることは間違いありません。

目立たずに確実に歯並びを治していくことができる点は、責任ある立場にあることも多い大人の方には大きな魅力です。

もうひとつの使い方として、、歯に被せ物などの修復をする前に歯並びを治すというものがあります。

無傷の歯が多い若い世代と違い、おとなの歯はすでに被せ物をしていたり、修復が必要になることが多いため、前歯にセラミックを被せるなどの治療を施す前に、歯並びを整えておくことで、より美しく修復したり、被せ物をするために歯を削る量を大きく減らすことができます。

そのような目的での矯正治療は、大きな歯の動きを要求しないため、費用も抑えられることが多いです。

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綺麗さん

私は昨年インプラント入れたので、ここがどうなるのか。また、前歯の詰め物も色が変わって気になっていました。インビザラインと、他の歯科治療との兼ね合いなど、具体的なことは歯科医院で相談することが必要ですね。思い切って、いつも行っている先生に相談してみようと思います。

まとめ

インビザラインは、目立たずに歯並びを治していくことができるスマートな方法。しかし、安易に飛びつくのではなく、治療に伴う不自由な点や、守らなければならないルールをしっかりと確認することが何より大切だと思います。

そこをクリアできれば、インビザラインの恩恵は底知れません。

インビザラインは昔からある治療法ですが、世界中で多くの症例が積み上がってきたことから、実績が上がり、信頼性も以前に比べると桁違いに高まったと感じています。治療をほどこす歯科医師がしっかりと知識や技術を身につけることはもちろん大切ですが、治療を受ける患者さんも、その恩恵を最大限に受けるために、積極的に治療に参加しましょう。

綺麗になることは、いつからでも可能です。諦めないで、ドアを叩いてみてください。

 

 

 

 

 

 

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