ガタガタの歯を、ほっとかないで!!〜小児矯正治療①〜
こんにちは。
今回は、小児矯正の症例をご紹介いたします。
Contents
症例における口腔内写真について
実際の患者さんの症例をブログで紹介するのは初めてなので、歯科の「口腔内写真」について少し。
歯科の症例紹介って、ヘアサロンや、エステサロンなどの写真と違って、お口の中の写真が「デカデカと」載りますので、あまり得意じゃない方は、無理しないでくださいね。インスタグラムの症例紹介に下記のような「表紙」をつけているのはそのためです。
インスタをみた「一般人」の娘に、「ああいう口の中の写真、歯科の人にとっては普通でも、一般の人は苦手な人もいるよ。見たい人だけ見れるように、カバーをつけてあげるべきだよ」と言われたのがきっかけ。同業者は、SNSに綺麗な症例を載せている方が多いので、なんとも思わなかったのですが、最も身近な一般人の指摘に「なるほど〜、確かに」と感心したのでした。
口腔内写真を始めるにあたって、自分用のカメラを買った際のよもやま話を載せていますので、カメラに興味のある方、口腔内写真を勉強してみたい歯科医療者の方は、ぜひ覗いてみてくださいね。
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重度の叢生(ガタガタ)がある症例
さて、前置きが長くなりましたが、というわけで、口腔内写真をみながら、解説していきますね。
今回のお子様は、小1の男の子。
写真で分かる通り、かなり重度の叢生(そうせい:歯が重なっていて、ガタガタしている)です。このまま成長すると、歯並びに強いコンプレックスをいだくことは想像に固くありません。
よくみると、下の歯が内側に押し込まれているために、上の前歯が支えを失って下に伸び、噛み合わせがすごく深くなっています。下の歯が見えない状態です。
次に、上あごと下あごを真上から撮った写真を見てください。
下の歯を見ると、こんな内側に押し込まれてガタガタです。上の前歯も、真ん中の大きな歯の隣に、永久歯が生えるのにスペースが全くありませんね。下あごは、仕上げ歯磨きの時などお母さんも気付きやすいですが、上あごをこの角度から見る機会はなかなかないと思います。
もう一点、上あごで着目して欲しいのが、「口蓋(こうがい)」と呼ばれる上あごの天井の部分。ぐっと深くくぼんでいるのがわかりますか?
これは、高口蓋といって、口を閉じた時に舌が上顎におさまっていないためにおこる現象で、口呼吸のあるお子さんにとても多い症状です。口呼吸があると、口を開いている時間が長くなるため、舌が上顎におさまらず、下方にさがってしまう低位舌という状態になります。口をしっかり閉じて、舌を上顎におさめることで、上顎の正常な発育が促され、口蓋も平になってきます。
さて、どうやって治療していきましょうか。
まずは、上あごの拡大からです。
拡大装置と呼ばれる取り外し式の装置を使い、上あごを広げていきます。
小児のうちは、口蓋の真ん中にある「正中口蓋縫合」という骨と骨の継ぎ目を使って、効果的に上あごを広げることができます。
拡大装置は色々な種類がありますが、当院ではこの骨の縫合部を効率的に、短期間で広げることができる拡大装置を専門の技工士さんに制作してもらい、使用しています。数ヶ月で、かなり口蓋が広がり、永久歯のはえるスペースも生まれてきましたよー。
拡大装置よりもさらに大切なのが、マイオブレースと呼ばれる筋機能訓練装置。
先ほどお話しした低位舌の問題を解決するために、舌を上顎にあてる場所(スポット)などを小さなお子様にもわかりやすく組み込んだ、オーストラリア製の装置です。この装置の装着と併用して、簡単な筋機能訓練を、おうちでしていただくことになります。
1年ほどマイオブレースを指示通りに使用し、月に一度、筋機能訓練の指導を受けにきてもらう治療を続けたら。。。
どうでしょう。上あご、下あごとも、大きく広がって、深かった噛み合わせもだいぶ理想的になりました。下の歯がしっかりと見えて、真上から見ると、内方に押しやられていた下の前歯がふっくらと広がったのがよくわかります。
ここまでくれば、教わった筋機能訓練を思い出しながら、経過観察に入ることができます。
筋機能に着目したこの治療方法が威力を発揮するのは経過観察に入ってから。
数ヶ月に一度のメインテナンスを続けていたこのお子様は、只今小学6年生。現在の歯並びがこちら。
惚れ惚れするような完璧な歯並びになっています。矯正中から定期メインテナンスも受けていたため、もちろん虫歯もありません。
このようにあごが前、横と立体的にしっかりと広がって成長すると、笑った時にきれいな半月状に並んだ白い歯が見える、美しい「ブロードスマイル」が完成します。
ブロードスマイルとは?気になったら、こちらも覗いてみてくださいね。
矯正治療を始める時期
歯並びは、もちろん綺麗なことに越したことはありません。
しかし、矯正治療は「必ずしなければならないもの」でもありません。
今回の例のように、小学校低学年の1〜2年を矯正治療にあててもよし、高校生や成人になって本人が気になってから、数年かけて治療をするもよし。現在の技術を使えば、高齢になってからでも、ほとんどの歯並びが綺麗に治りますので、矯正治療をする時期はいつでも可能です。
ただ、大人になってからでは直せないもの。
それは、骨格(手術をすればこれも可能ですが)と、筋機能の乱れ。
やわらかい骨の成長を利用し、さらに歯並びを悪くしている「原因(=筋機能の乱れ)」に早期にアプローチできるという点で、子供のうちが圧倒的に有利なのは確かです。特に、当院で行っている治療の最適齢期は6〜8歳。この頃に始めることができれば、もちろん100%ではありませんが、永久歯が生えそろってからの「仕上げの2次矯正」は必要なくなることが多いです。
ただ、お子さんの性格や、おうちの方のライフスタイル、考え方によって、矯正をするかしないか、そしていつどんな方法で始めるかは、違っていいものと思います。しかし少なくとも、下の前歯がガタガタしてきた小学校低学年までに、このような早期治療があることを知り、どのようなものかを知った上で、今やるのか、時期をずらすのかをじっくりと考えて欲しいなと思います。
不正咬合の芽は乳歯のうちからわかります。
5歳くらいになった時、乳歯が隙間なく綺麗に並んでいる場合は、要注意です。前歯が永久歯に生え変わった時、この症例のお子様のようにガタガタしてきてしまう可能性が高いです。
小学1年生から約2年間、矯正装置の装着や、筋機能訓練を頑張ったこの男の子とお母さんは、小学校のうちに綺麗なスマイルを手にすることができました。症例の掲載を快く引き受けてくださり、感謝いたします。
岩手県盛岡市
医療法人颯爽 まつうら歯科クリニック