【大人の予防歯科】大人の入口。高校生のメインテナンスは、大人のメインテナンスと違うのか?
こんにちは。歯科医師の松浦直美です。
前回の記事では、私の母(81歳)に行った大人メインテナンスの実際を紹介しました。母は、昔から歯が弱く、多くの歯に被せ物などの治療を施されているにもかかわらず、歯がしっかりと残っており深刻な歯周病もありません。私が歯科大学の学生になってから、当時はまだまだ普及していなかった歯科のメインテナンスをしっかりしてくれる歯科を見つけ、早々に通うようなったことが大きかったかと思います。
81歳のメインテナンスのお話はこちら↓
今回は、当院患者さんの協力を得て、休みになると多くなる、高校生のメインテナンスを紹介します。
こんな高校生のメインテナンスは、大人のメインテナンスとどこが一緒で、どこが違うのでしょう。
高校生のメインテナンス、全貌紹介
当院では高校生になったら、GBTメインテナンスを始めます。基本は、大人と同じやり方です。
GBTメインテナンスとは、(Guided Biofilm Therapy:ガイデットバイオフィルムセラピー)の略で、当院で使用しているメインテナンス機器「エアフロープロフィキラシスマスター(下写真)」を開発、販売しているスイスのEMS社が推奨しているメインテナンス方法です。エアフローを正しく使用し、毎回のメインテナンス効率的かつ効果的に行うルール(ガイド)に沿ったやり方で、生涯使える歯の維持を目指す、というもの。(これから先は実際のお口のな方の写真がでますので、苦手な方はここまでにしてくださいね。)
GBTメインテナンスについての詳細を知りたい方は、こちら↓
- 歯肉の検査
高校生は歯肉炎がとにかく多い。勉強や部活、趣味(息子は大の馬好き)、はたまた友人や彼氏、彼女との付き合いにも忙しく、歯のケアにもっとも関心がない時期かもしれません。この時期に将来歯周病へと移行する歯肉炎や、虫歯に罹患することが多いので、歯肉の検査はおもに「出血」に注意してみていきます。
- 染め出し
バイオフィルムを可視化します。「毎日磨いている」というこの方も、染め出してみるとこの通り。いかに、磨けていないかがわかります。
- 歯磨き指導、プロの歯磨き
さあ、可視化されたバイオフィルムには、さすがの高校生も「!!」。面倒くさいからと言って、薬局で売っているマウスリンスなどをどんなに使っても決して落ちないもの。それがバイオフィルムです。バイオフィルムを落とす唯一の方法は・・・「機械的に除去する」。自宅での歯ブラシが基本ですが、それだけで100%落とすのは無理。残りのバイオフィルムを定期的に除去するのが、定期メインテナンスの目的です。この高校生君には、大きめの歯ブラシで効率的に落とす方法を伝え、次にプロの歯磨きで、歯肉のマッサージをかねた細やかな歯磨きを行います。大人のメインテナンスと同じく、ここでも歯ブラシを当てる角度は、世界中で推奨されている「バス法」とは逆の「毛先が上向き」です。高校生に特有の歯肉炎を強力に「歯ブラシで治療」するための磨き方です。
- エアフローと歯石除去
プロの歯磨きを行ってもなおこびりついているバイオフィルムを落とすのはやはりエアフロー。施術しているこちらも、超微粒子のグリシンパウダーで、歯の表面の膜が一層さあ〜っと剥がれ落ちるような快感があります。
若い方ほど、歯を傷つけるメインテナンスは絶対にしたくありません。クルクル回るブラシや研磨剤の入ったクリーニングペーストはいっさい使いません。
- 虫歯のチェック
この方にはずっと経過をみている白濁(初期の虫歯)がありますので、そのあたりを目を皿にしてチェック。心配なところには高濃度フッ素を塗布します。バイオフィルムの除去に加え、普段のフッ素入り歯磨き剤(低濃度フッ素)と、定期メインテナンスでの高濃度フッ素塗布の2段構えの対策が、虫歯予防に最も効果的と言われています。歯磨きがなかなか上達しないこの方も、なんとか虫歯が増えずに済んでいます。
- 次回のメインテナンス予約
次回は春休み。バイオフィルムがすっきりと落ちて、綺麗になったこの歯を、これからも大切にして欲しいなと思うのでした。
結局、シニアのメインテナンスとどこが違うの?と思った方。そうなんです。GBTメインテナンスは、高校生から大人(当院に通院されている現在最高齢は95歳)まで、基本は同じ。そして、どんな方にも適応できる現在のところ最強のメインテナンスだと思います。
すべての年齢の方にやるべきは、その方にとって大事な部分の磨き方を習得してもらうことと、バイオフィルムの機械的除去。バイオフィルム除去は、当院ではプロの歯磨きとエアフローで行っています。歯磨き指導のやり方と、使用するフッ素の種類などは、年齢やその方のライフスタイル、症状に応じて、加減しています。今回登場していただいた方のように、これからまだまだ長い若者には、歯磨き指導は厳しくしているのですが、身につくまでにはまだまだ時間がかかりそうですね。歯にとっての「ギャングエイジ」、世の中の高校生のお母様たち、一緒に子供たちの歯、守っていきましょう。