【大人の予防歯科】今日は母の歯のメインテナンスをしました。
こんにちは。歯科医師の松浦直美です。
【大人の予防歯科】は、30代以上の成人の方むけの予防歯科の情報をわかりやすく伝えるシリーズです。
きょうは、大人も大人、80歳を超えた私の母のメインテナンスの内容を紹介しながら、年齢に即したメインテナンスの大切さについて、考えてみたいと思います。
Contents
成人メインテナンスの基本 GBTメインテナンス
当院のメインテナンスは、スイスのEMS社から出ている最高機種「エアフロープロフィラキシスマスター」を使用した、「GBTメインテナンス」が基本です。GBTという聴き慣れない言葉は、「Guided Biofilm Therapy」の略で、簡単にいうと「ルールに沿ったバイオフィルムの除去」という意味合いです。
1. 歯ぐきの検査
まずは、殺菌水(当院では院内を循環している次亜塩素酸水ポィックウォーターを使用)でしっかりとうがいをしてから、歯ぐきの状態を調べます。これは、これから使用するエアフローをどのように歯ぐきの縁に効かせていくかを考えるためでもあります。
2. 染め出し
専用の染め出し液で、バイオフィルムを染め出します。これは、磨き残しを患者さんにお知らせする、というよりは、バイオフィルムを可視化して、重要な部分の取り残しがないように、という意味合いで行っています。ちなみにうちの母は、セラミックがかぶっている上の数本は汚れがつきませんが(セラミックはやはりすごいと思う)、それ以外の場所には汚れがびっちりです。なかなか自分できちんと磨けなくなっています。
3. 歯磨きの指導とプロの歯磨き
染め出しは患者さんの歯磨きのダメ出しのためではない、と申しましたが、そうは言っても最低限気をつけて欲しい歯磨きのチェックは行います。毎回少しずつ確認することで、目標の「プラークスコア20%(80%の汚れがおとせている)」未満を目指します。
さらに当院では、歯科医師や歯科衛生士が、歯肉のマッサージを兼ねて、「術者磨き」と呼ばれる歯磨きを行います。毛先が、歯と歯の間に入り込んでいるのがわかりますか? この磨き方は、一般的にいろいろな歯科医院や書籍で紹介されている「バス法」とは真逆の方向に歯ブラシを当てて、歯ぐきを下げることなくしっかりとバイオフィルム(プラーク)を取り除く方法。少し難しいので、メインテナンスのたびに術者が磨いてあげて、体感してもらい、希望があればやり方をお知らせしています。
4. エアフロー
歯に残った汚れや、歯周ポケットの中の汚れ(バイオフィルム)を、専用のパウダーで、しっかりと取り除いていきます。
このエリスリトールパウダーによるパウダートリートメントは、くるくる回るブラシなどを使用したメインテナンスに比べ、歯をほとんど傷つけずに、バイオフィルムだけを取り除く、本当に優れた方法です。このあと、必要があれば歯石を取り除きます。
保険診療に使用するにはとても高価なため、歯科医院泣かせ(とほほ)な、エリスリトールパウダーについての記事はこちら。ますます歯科メインテナンスに興味が湧きますよ↓
5. 虫歯のチェック
虫歯の診査は、バイオフィルムをしっかり落としてから。
うちの母は高齢の上、若い頃にたくさんの歯を大きく削って被せ物をしているため、被せ物の縁から虫歯になる「2次虫歯」になりやすいのです。すでに何度か被せ直しをしていますが、今回も1本、歯と歯ぐきの境目に虫歯を発見。他にも、怪しいところがあったため、高濃度のフッ素と進行抑制剤を塗布して、終了です。
6. 次回の予約
GBTメインテナンスは、今回のメインテナンスの状態をみて、次回の予約を決めるまでがルーティンです。母のように虫歯が心配で、自分での歯ブラシが完全にできなくなっている方は、1〜2ヶ月ほどの短期間で。だいぶブラッシングが上達したけど歯周病がまだ安定していない方は、3〜4ヶ月。ご自分の歯ブラシが上手で、大きな心配がない方は6ヶ月、など、その方にあった頻度で次のメインテナンスを決めます。
ルールを守りながらも、それぞれの人にあったメインテナンスを
GBTメインテナンスは、エアフロープロフィラキシスマスターを開発したスイスEMS社が提案している、効率的で効果的なメインテナンスの順番とルールに基づいた方法で、ヨーロッパをはじめとした世界中で認められている方法です。
そのルールをしっかりと守った上で、当院ではさらに術者による「プロの歯磨き」を加えて、患者さんに「歯ブラシを当てて欲しいところ」を体感してもらえるようにしています。さらに、母のように「歯の根元の2次虫歯」が心配な方には、フッ素や進行止めを塗ったり、ご自宅での歯磨き剤をフッ素のしっかり入ったものに変えてもらうなど、その方にあったアドバイスをします。
まとめ
当院でのGBTメインテナンスは、これまでも何度か取り上げて参りましたが、今回は私の母のメインテナンスを具体的にみていただいたことで、少し全貌がわかりやすかったのではないでしょうか。
バイオフィルムを制するものは、歯周病も虫歯も制する。これは、紛れもない事実です。
今後も、しつこくお話ししていきますよ〜。
GBTメインテナンスについてさらに知りたい方は、こちらの記事も参考にしてくださいね。