かっこの良い年の取り方 〜第99回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖
歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 かならず毎月、どちらかが書く
2 内容は、歯科治療以外のこととする
第99回 かっこの良い年の取り方
先日、ジャズトランぺッター日野皓正の盛岡公演に行ってきた。
若かりし頃一度観たことはあったが、彼 のライブに参加するのは本当に久しぶり。なんと今年で80歳になったそうだが、「こめかみの血管が切れる のでは!?」と心配するほどのパワフルなステージを魅せてくれた。
パワフルなだけではなく、繊細さや優 しさも感じられる演奏も多く、美空ひばりの「川の流れのように」やチャールズ・チャップリン作曲「スマイル」のアレンジは新鮮だった。
アメリカに拠点を移してから50年近くになるそうだが、盛岡は戦時中疎開で訪れた土地であり、来るたび に懐かしく感じられると言っていた。また、NHKの国際放送で流れる朝ドラを観ては、日本人の優しさや家 族を思いやる気持ちに感じ入り、涙することが多くなったそうだ。
そんな感情からインスパイアされ作曲した という「きずな」、そして53歳で亡くなった弟日野元彦氏作曲の「イッツ・ゼア」は、情感あふれる演奏であっ た。
またクインテットのメンバーも皆、テクニックに裏付けされた個性豊かなソロ 演奏を披露してくれた。それに合わせてマリンバやカウベルを操りながら、楽しそうにステップを踏む日野氏は、失礼な言い方をすると、とてもチャーミング な80歳であった。
「日野さんは、メンバーにあえて若手を加えて育てているんだよ。」と、一緒 に行ったY女史が教えてくれた。
数年前、中学生ドラマーへの指導が行き過ぎ たものだと、物議をかもしたことがある日野氏だが、音楽(仕事)への真摯な 姿勢を後世に伝えるのも使命と思っているのかもしれない。
ちなみに、Y女史 は高校の同級生だが、50歳になってからサクソフォンを始めたアクティブな女性だ。仕事でも責任ある立場にあり、スタッフの指導等同じような悩みもあるようだ。「僕らもお茶目で、かっこ良く年をとりたいもんだね…」と、終演後焼き 鳥をあてにビールを楽しんだ秋の夜であった。
(文 松浦政彦)