【40代からのオーダーメイド歯科メインテナンス】定期通院できる歯科医院と患者さんの関係は、「質の良い友人関係」。
こんにちは。歯科医師の松浦直美です。
先日、ある大手雑誌のウェブサイトで、「脳の老化を止めたければ、歯を守りなさい」」(かんき出版)の著者、長谷川嘉哉医師による記事を目にしました。
認知症治療に口腔ケアを取り入れ、長年歯科との連携を積極的に行ってきた長谷川医師によると、予防歯科に力を入れている歯科医院が2割にも満たず、口腔ケアの供給は量、質ともに十分ではない、というのです。
私の感覚では、予防に力を入れている歯科医院はとても増えていると思っていたので驚きました。
地域の特性や(私が住んでいるのは東北の県庁所在地で、貧困格差、医療格差などがあまりない住みやすい地域です)、予防歯科に力を入れている歯科医師仲間が多い、という関係で、そのように思っていただけなのかもしれません。
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脳の老化と歯に関係があるのか
歯がなくなると認知症になるとかならないとか。さまざまな記事や本を目にします。
脳の老化に歯が関係あるのかどうかは、いろいろな研究がされていますが、現時点では、歯がなくても、入れ歯などでしっかりと「噛める」状態であれば、脳への影響はそこまではないとされています。
しかし、入れ歯になる方がしっかり噛めているかどうかは別問題。入れ歯になったことで、他の歯への負担がかかってしまったり、合わない入れ歯をだましだまし使っているような方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、入れ歯を入れているからといって安心できません。
また、歯を抜いて入れ歯にしなければならなかった理由が「歯周病」であれば、歯周病菌の全身への影響も明らかになっている今、やはり歯がないことと脳への影響は、関連があるとも言えます。
ある歯科大学の調査では、かかりつけの歯科医院のない人は、かかりつけの歯科医院で定期検診を受けている人と比べて、平均1.44倍認知症になりやすい傾向が見られたそうです。(前述の長谷川医師の著書より)
安心して定期検診(メインテナンス)を受けられる歯科医院とは
きちんとした口腔ケアを続けることで、脳の老化が防げる可能性は十分にあるのでは、と思います。美味しく物が食べられたり、歯や口臭に対する不安が減ることで、笑顔やコミュニケーションも多くなるでしょう。
では、かかりつけ歯科医のいない方は、どうやってこれから口腔ケアを受ける医院を探すのでしょう。
上記の長谷川医師の記事によると、通うべき歯科医院として、「ホームページが充実している」「歯科衛生士がいる」「保険適用外の治療の説明もしっかりとしてくれる」「治療チェアが5台以上」などとあげられています。大きい歯科医院の方が、福利厚生や、歯科衛生士の教育などに費用がかけられるため、良い歯科衛生士がいる、というわけです。
また、プラークだけをとって、歯石を取り残す衛生士がいるので注意、とも書かれています。
それぞれとても一理あり、歯科選びの参考にはなると思いますが、治療チェアが1〜2台だけでもきちんとしたメインテナンスをしているところはたくさんあると思いますし、歯科衛生士だけではなく歯科医師がメインテナンスも担当することもあります。ホームページに至っては、業者に丸投げ、なんてところも多いです。
歯石の取り残しはないに越したことはありませんが、歯ぐきの中に入り込んでいるような硬い歯石は無理して取らずに、柔らかいプラークだけをしっかり取り除く方が安全なことも多々あります。もちろん、歯ぐきが引き締まって、取りやすい場所に歯石が見えてきたら、歯を傷つけないように歯石を除去します。何はなくとも、歯を必要以上に傷つけない。これが、歯を守る鉄則と考えています。
そう考えれば、通うべき定期メインテナンスとは、一部の例外を除き、歯石を取る金属の道具で「ガリガリ」、歯を白く磨くためにくるくる回るブラシに洗浄剤をつけて歯に押し付ける「ぐるぐる」がないメインテナンス。そしてなるべく歯を削らないように初期の虫歯をコントロールしてくれるメインテナンス、と言えるのではないでしょうか。
しかし、技術面よりも、さらに大切なことがあります。
質の良い友人のような関係
当院では、初期治療(歯磨き指導や、歯のクリーニング、歯周病の治療)が終わり、その後必要があれば虫歯の治療を行います。最後に、これからの定期メインテナンスのご案内をして、最後まで通院してくださったことをねぎらいます。
メインテナンスのご案内のチラシには、ずっと前から、作家坂東真理子さんの著書「女性の品格」に書いてあった言葉をお借りして、歯科医院とメインテナンス患者さんのこれからのお付き合いを提案しています。
それは、「細く長く続ける質の良い友人のような関係」
え、歯科医院と友人ですって?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
質の良い友人とは、しょっちゅう会ったり一緒に行動したり、という「積極的な」関係とは違って、1年に一度の贈り物をしたり、時々相手を思って手紙やメールなどで連絡を取ったり、という細く長く続く友人関係。そういう人が増えてくれば、「本棚に気に入った本が自然と増えていくように」良い友人が増えてくる、と坂東氏は著書の中に書いています。
大掛かりな治療はないけれど、数ヶ月に一度顔を合わせて「どうですか?」とちょっとした近況のお話をしたりしながら、安心して、自分をよく知る歯科衛生士のメインテナンスを受けていただく。メインテナンスの細かい手技はまた別にして、これこそが、定期メインテナンスの理想の形ではないでしょうか。
まとめ
口腔ケアを定期的に受けるメリットは数え切れないくらいあります。その中で、今回は「脳の老化を防ぐ」という観点から口腔ケアを推進している医師の、「定期メインテナンスに通うべき歯科医院」についての記事を少し掘り下げてみました。
しかし、結局は歯科と患者さんも人間と人間。なんとなくここなら居心地がよく通えそう、この衛生士さんと先生がなんとなく好き、そんな理由でも十分です。かかりつけの歯科を持ち、歯を長持ちさせて美味しいものを食べ、そして脳の老化も防げたら、最高ですね。