【大人の予防歯科】カリオグラムを利用した予防歯科で、結果が目に見える!
こんにちは。歯科医師の松浦直美です。
予防歯科を行っていく上で、参考になる指標の一つに唾液による虫歯リスク検査があります。
なんで虫歯になっているのか、を探ることで、その方独自の予防歯科の方向づけができるので、とても便利なツールです。
でも、それ以上に大きな役割としては、患者さんご本人がとてもやる気になってくれること。特に、今までずっと歯科医院に通っていたのに、なぜか虫歯と縁が切れなかった、などという方は、一度リスク検査を受けてみるのもいいかもしれません。
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世界標準のリスク評価ソフト。カリオグラムとは
カリオグラムは、スウェーデンのマルメ大学の虫歯予防学の教授だったDouglas Bratthall先生が開発した虫歯リスクの評価ツールです。唾液検査の結果をひとつひとつ数値化して入れていくことで、虫歯にかかるリスクがわかります。
唾液検査を利用した予防歯科についての概要は、こちら↓
虫歯のリスクを測る方法はさまざまありますが、やはり唾液検査とカリオグラムを用いたリスク検査は、最も信憑性が高い方法の一つではないかと思います。
このカリオグラムを用いて、当院歯科衛生士による予防プログラムを実施した女性の例を、ご紹介します。
47歳の女性。毎月歯科医院に通っていたのに。
今回の予防プログラムは、長い間毎月歯科医院に通っていたという47歳の女性。
あまり歯磨きが得意ではなく、歯は汚れていて、虫歯もありました。
もう虫歯になりたくない!と、唾液検査によるリスク検査をご希望されました。
検査でわかった主なポイントは以下の通り。
1. 虫歯菌(ミュータンス菌、ラクとバチラス菌とも)がとても多い。
2. 磨き残しが多い
3.唾液の量、緩衝能(食事の後にお口の中を中性に戻してくれる唾液の力)は問題なし。
4.フッ素入り歯磨き剤は使用しているが、使い方に少し改善の余地あり。歯科医院でのフッ素塗布はしていない。
上記の情報を、カリオグラムに一つ一つ入れていきます。
トータルリスクスコアは14。増やしていきたい緑の部分「虫歯を防げる可能性」は、25%。とても低いです。やはり細菌が多いのが心配なところ。
さらに、この方は、いつも歯科に通っていたにもかかわらず、歯磨きがあまり上手ではなく、歯磨きの上達(プラーク量がへる)というのはあまり望めないため、下記プログラムを立ててみました。
明らかに古くてあまり歯にきちんと合っていない被せものを作り替えることで、虫歯菌のうち、ラクトバチラス菌を減らします。さらに、フッ素入り歯磨き粉の正しい使用と、歯科医院でのフッ素塗布を始めることを、予防プログラムの柱とします。
どうでしょう。この予定だけで、増やしたい「緑色」の部分が、25%から63%まで増えました。トータルリスクスコアは11。虫歯にならないとされるスコア9までは届きませんが、現在14と高値なので、11まで落とせればまずまずです。
この方は唾液の質は良いので、定期メインテナンスでのバイオフィルムの除去を基盤に、あまり上手ではないとはいえ、歯磨きの仕方の根気強い指導と、歯科医院でのフッ素塗布、というシンプルなプログラムをはじめました。
予防プログラム開始後1年
虫歯をしっかり治療し、不適合な被せ物を作り直した後、初めは月に一度、その後は3ヶ月に一度の来院で、バイオフィルムの除去と、歯磨きの指導を続けました。
1年後のカリオグラムの結果は、下記の通り。
なんと、増やしたい「緑」の部分は、予防プログラムとして予定していた63%よりも、はるかに高い79%という結果。トータルリスクは、目標値を超えて、今後虫歯は起こりにくいとされるスコア9。
ご本人の努力で、あまり期待していなかった磨き残しのプラーク量がかなり減ったのと、それに伴い、減らすのが難しいとされているミュータンス菌が、減ったことが原因です。歯科医院での高濃度フッ素塗布は、ご本人があまり積極的ではなかったこともあり、しっかりとはできていませんでした。
歯科医院でのフッ素塗布を今後きちんと取り入れていくと、カリオグラムは下のように更なる変化を遂げます。
なんと緑の「虫歯を防げる可能性」は93%、トータルリスクスコア8。パックマン(古い!?)が悪いものを飲み込んでいるような、すごいパイグラフになります。こうなれば、将来にわたって虫歯がおこる可能性は限りなく低くなります。
予防プログラムをきっかけに、歯磨きや定期メインテナンスの通い方も変わった
この方は、毎月歯科医院でクリーニングを受けていたにもかかわらず、しょっちゅう虫歯になっていました。
唾液検査と、その後の予防プログラムを歯科衛生士としっかり取り組んでいただいたことで、その後の虫歯の発生は1本もありません。定期メインテナンスも、3〜4ヶ月に一度で落ち着いています。もう少しすれば、半年に一度でも良くなるかもしれません。
虫歯が少なくなったと言われますが、それは子供や比較的若い方の話であることが多く、年齢を重ねた方はまだまだ注意が必要です。
一度予防プログラムのような積極的なリセットを行い、その後は生涯にわたって、歯科とのお付き合いを細く続けていただくのが理想の形だと思います。