進むか引くか。Kings College London の審美歯科コースの更新が迫る
こんにちは。歯科医師の松浦直美です。
私は、昨年2021年の1月から、英国にあるKings College Londonという大学の卒後研修(Master of Science)の審美歯科コースに在籍して、審美歯科を基本から学んでいます。日本にいながらこんなことができるのは、まさにロンドン大学のディスタンスラーニング(通信制)システムのおかげ。
50代も半ばにさしかかってからの学生生活ではありますが、授業はたま〜にある程度で、あとはひたすら自分で宿題や課題を進めます。
素晴らしいのは、このシステムがコロナ禍で仕方なく誕生したわけではなく、もうずーっと昔から続いている制度だという点。University College London や Kings College Londonといったいわゆる「ロンドン大学」の「通信教育制度」は、大きな特徴の一つで歴史が深く、「クリスマスキャロル」を執筆した作家チャールズディケンズに「真に人々のための大学だ。屋根裏で勉強している靴職人にも教育の機会を与えている(Wikipediaより)。」と言わしめたとか。
貴族しか入ることのできなかったオクスフォードやケンブリッジ大学に対し、多くの人たちに門戸を開いたロンドン大学のおかげで、こうやってファーイースト(極東)と呼ばれた日本で、働きながら学べるというのは、やはり良いことなのでしょう。
しかしです。
本当は、働きながら勉強したい二宮金次郎みたいな人って、そんなに多くないはずなんですよ。私だって、こんな大変なこと、そんなりやりたいわけではありません。その証拠に、3年間続くこのコースですが、必死に論文を読みまくり、課題をこなし、試験を受けた1年目がすぎた2021年の暮れに、一旦「休学」することを決めました。
2021年の2月に行われるはずだったロンドンでの1週間のスクーリングが、コロナ禍のために1年後(今年)の3月の末に変更になったことで、末息子の高校入学(しかも県外での寮生活)に重なって、行けなくなったのが1番の理由ですが、「こんな生活は無理」と思ったことも一つです。
大変なことがわかっていただろうに、どうしてまたそんなこと始めたのよ?と聞かれると、ぐうの音も出ないのですが、二つほど理由があります。
一つは、やはりきちんとした本物の審美歯科を徹底して勉強してみたい、と思ったこと。特に、自分のように人生も後ろ半分にいる人たちの、見た目や機能を歯科医師ならではの視点で自然に変えてあげることができたら、素晴らしいなと思いました。
もう一つは、自分が保持している英国の歯科医師免許は、日本と違って更新制で、5年間で100時間の認定講習を受けないと、次の5年間の免許更新ができないという理由。
なかなか英国の認定講習を100時間も受けることは難しく、以前から興味のあった審美歯科のコースを受けることで、この100時間がクリアできたら、一石二鳥じゃないか!と思ったわけです。
休学してのんびりと2022年を過ごしていたのですが、平和は長く続きません。先日、大学から1通のメールが。
「復学したいなら、今月の24日までお返事を」
休学は2年間まで認められているので、来年戻るのか、はたまた再来年まで延ばすのか。もしくは、出席できなかったスクーリングのみ来年受けて、1年間だけのサーティフィケートを受けて終了することも可能です。
返事の期限が迫る中、「初心に戻ってもう一回だけ頑張ってみなさいよ!」という自分と、「1年の修了証だけで十分じゃない?足りない更新単位は後で考えればさ〜」という自分がいます。
進むか引くか。
将棋では、上級者は効果がない攻めをせず、引いて守る、という戦い方をすることもあるとか。年齢だけは「上級者」に入ってきた私ですが、なかなか答えは出ません。もう少しだけ、盤上をにらみながら、今後どんな手を打とうか、迷ってみようかと思います。