【ペリオ大学】あなたの「オリジナル歯周病リスク」を知ろう。

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

「ペリオ」とは、歯科用語で「歯周病」を指す言葉で、本来は歯を支えている歯ぐきや骨など歯の周りの組織のことをいいます。45歳以上の過半数が罹患していると言われる歯周病。【ペリオ大学】では、歯周病を筆頭とした歯周組織に関わる疾患や症状について、わかりやすく説明していきます。

第一回【ペリオ大学】40代以降の多くの方が悩む「歯ぐき下がり」についての記事はこちら↓

第二回【ぺリオ大学】「歯ぐき下がり」の兆候と早期対応はこちら↓

Contents

歯周病はどのくらい蔓延しているのか?

まずは、基本のキ。とてもよく耳にする「歯周病」という言葉。国民の8割が罹患しているなど聞いたことがある方も多いかと思いますが、「8割」が歯周病、というのは少し過大評価です。

「8割歯周病説」は、2005年の歯科実態調査の際の検査の方法が少し厳しすぎた(少し歯石がついているだけでも「歯周病」というくくりになっていた)ため、という見方が正解らしく、実際の歯周病の罹患者の割合はもう少し低いです。私の臨床を見ても、それは実感します。

そもそも、「歯石や歯垢がついている」「歯ぐきが腫れている」= 歯周病

ではありません。もちろん、歯石や歯垢、歯ぐきの腫れ(歯肉炎など)は治療が必要ですが、歯周病の定義は、「歯周病菌によって歯を支えている骨がダメージを受け、溶けてきて歯を支えきれなくなってくる」状態のこと。(下図参照:日本歯周病学会ホームページより)骨に影響がない段階であれば、「歯肉炎」またはただの「歯磨き不足」。歯周病の予備軍、ということになります。

国民の8割が歯周病は大げさ、と申しましたが、この「骨に影響が出ている本物の」歯周病に罹患している人が、45歳以上の過半数、というのは、それでもやはり見過ごすことはできない数字だと思います。

 

歯周病になりにくい人となりやすい人がいる

さて、45歳以上の過半数が罹患している歯周病。そして、歯周病予備軍を含めると8割が、なんらかの歯肉の症状があるということは上記でお話しました。しかし、歯磨きが下手でも、歯石がついていても、「歯周病」に移行しない方がいる一方、一生懸命歯磨きをしても歯周病になりやすかったり、進行しやすい方がいるのも事実。「不公平だ!」といっても、これは仕方がない事実で、ご自分の「リスク」を知ることが歯周病予防の第一歩になります。

歯周病があるかどうかは、歯科医院でレントゲン写真と、歯と歯ぐきの境目の溝(深くなると歯周ポケットと呼ばれます)の深さを専用の器具で測定する検査が必要です。歯科にいらしていただければ、さまざまな口腔内の状況と全身状態を加味し、歯周病への対策ができます。

しかし、歯科医院で検査をしたことのない方でも、下記の方は将来歯周病になったり、現在の歯周病が悪化していく「リスク」がとても高いので、注意してみてみましょう。

① 血液検査でよく測定されているCRPの値が1mg/L以上(1〜3mg:中等度の進行、3mg以上:急激な進行の恐れあり)
② 喫煙者(1日10本未満:中等度の進行、10本以上:急速な進行の恐れあり)
③ 糖尿病のある方(HbA1C 7%未満:中等度の進行、7%以上:急速な進行の恐れあり)

上記は、歯科医院にこなくても、普段の健康診断や、生活習慣でわかる症状です。上記に当てはまる方は、早めの歯科受診を考えてください。
*上記の症状以外をにも「歯周病のリスク因子」が存在します。正確な歯周病リスクは、歯科医院での精密検査が必要です。

リスクの高い人が注意するべき事柄

歯周病は、上記に挙げた症状のある方ががまず高いリスクの筆頭にきます。リスクとは、現在歯周病であることとイコールではなく、「将来への」リスクです。特に、糖尿病は歯周病を引き起こしたり悪化させたりするだけではなく、歯周病があることで糖尿病を悪化させる、という双方向への悪影響があるため、特に注意が必要です。そのため、糖尿病に関しては特に医科歯科の連携を進める声も大きくなっていますが、まだ地域によってその充実度は大きな差があると言わざると得ません。糖尿病がある方は、まずはしっかりと主治医のもとで病状をコントロールすることが何より大切です。そして、主治医の紹介があるなしにかかわらず、必ず歯科の検診を受けていただきたいと思います。

喫煙も、もう一つの大きなリスクファクターです。他の健康への影響も考えて、減煙または禁煙するのは一つの素晴らしいチャレンジかと思いますが、すぐに難しい方は、やはり歯科での定期検診を自分の生活習慣に取り入れて下さい。

まとめ

自分が歯周病に注意が必要なタイプなのかどうか。まずは、そこを知るところが大切です。リスクの高いグループにいるとわかった方は、まずは歯科検診が必要になります。その後の対応は、かかりつけの歯科でしっかりと相談して下さい。

上記に挙げた最上位のリスクグループに属さないと思われる方でも、まだまだ歯周病リスクが存在します。できれば歯科で歯周病の精密検査を受け、自分に心配なリスクがないか、確認していただきたいと思います。今回ご紹介した「てっぱんリスク」以外の歯周病のリスクについては、次回の【ペリオ大学】で、お話します。

 

 

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