感動のバトンを持ち続けよう 〜第85回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖
歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、歯科医院を共に営む夫(真面目なのでここではマジオ君)とともに、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年から院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 必ず毎月、どちらかが書く。
2 内容は、歯科治療以外の事とする。(時々ルール違反あり)
第85回 感動のバトンを持ち続けよう
人は、誰かから何かをもらうと、他の人にもそれを渡したくなるという習性があると思う。
一般の読者が投稿するある冊子で見つけた「マスクリレー」という話。スーパーでマスクを落としてしまい困 っていたところ、後ろから「はい、マスク」と新品のマスクを手渡してくれた方がいたというのだ。それだけでも嬉しかったのに、その方はなんと「はい、これも。おニューだよ」ともう一枚差し出した。 「え、一枚で十分です」驚いてそういうと、「これは予備。今度誰か困っているのを見たら、渡してくれ るかな。「マスクリレー」よ」。それ以来、この作者は毎日5枚入りのマスクを持ち歩くようになったそ うだが、まだ「次の走者」は現れていないとか。それでも、鞄の中のマスクを見るたびに、「いつか私 も」と優しい気持ちになるそうだ。
この話を聞いて、昔、ロンドンの地下鉄の中に貼られていた利用者による「地下鉄エピソード」の一話を思い出した。ある医学生の若者が、電車の中で来たる試験に備えて問題集(イギリスの医学部でよく使われる本で、 医学生たちがつけたニックネームがあるのだがどうしても思い出せないので、仮に「ラビット」とする)を開いていた。緊張と不安で押しつぶされそうで、おそらくすごい形相でラビットと向き合ってい たのだろう。誰かが肩を「トントン」と叩くまで、自分がどこにいるのかさえも忘れていた。顔を上げると、中年の紳士が目の前に立っていて、「ラビットか。懐かしいな。大丈夫、絶対受かるよ」と親指を立ててみせた。そのスマイルは本当に優しく自信に溢れ、厳しい試験を前に自分を失いそうになっていたその学生は、思わぬ先輩の登場に勇気を取り戻したそうだ。
その後医師となって10年ほどたったその元学生は、「私はあれからずっと、電車の中でラビットを 開いている学生を探し続けている。」と話を結んでいた。自分が受け取った勇気のバトンを、同じ境遇の若者に渡したいと思いながら、10年もの時間を待ち続けているという話に、ぶるっと感動したことを覚えている。
人から温かい何かを渡されたら、それをまた誰かに渡したくなるのは人の常。実際にそれをする のは案外難しいが、「その時」を待つ時間もまた幸せ。それに、「自分も」と思ってもらえることを誰かに渡すことができればそれは渡した本人にとってもこの上なく嬉しい。「情けは人のためならず」 である。(文 のあみ)
どうしても思い出せない「問題集」の名前
ロンドンの地下鉄「Tube」は、東京の地下鉄に比べると小さくて、とても狭い。今はどうかわからないが、東京の地下鉄のように広告のチラシや、モニターでCMが流れたりすることもなく、シンプルなものである。そんな中で、地下鉄にちなんだエピソードが車両のいろんなところに貼られる、というイベントにでくわしたしたことがある。今回紹介したのはその時に見つけたものの一つで、医学生の大変さは世界中どこでも一緒なんだなと思ったと同時に、最後の一言にとても感動し、それから何年も経った今も思い出す。しかし、どうしても思い出せないのがこの「問題集(もしくは参考書)の名前。イギリスの医大生なら誰もが知っているもので、皮肉を込めた可愛らしいニックネームがつけられていたとその文章にはあったのだが、そのニックネームがどうしても思い出せない。Rat and Cat ? Rabbit and dog? そんな感じだったと思うのだが、どんなにグーグルで検索してみても、それらしい名前は見つからず、あれは幻だったのか?とまで思う。
もし、このブログをみて、「あれのことかな?」と心当たりがある方がいたら、教えてほしい!
まあ、わかったからどうなるということでもないのだが、幻を院内新聞に書いたわけではない、と思って安心したいので、ぜひご協力を(^-^)。