植物の成長、医院の成長 〜第82回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、歯科医院を共に営む夫(真面目なのでここではマジオ君)とともに、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年から院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 必ず毎月、どちらかが書く。
2 内容は、歯科治療以外の事とする。

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のあみ

毎年この時期になると登場するガーデニング話。小さな医院の前にある花壇の話。昨年間違ってちょん切ってしまい、その後枯れてしまった様に見えていたつる植物が、緑の芽を吹き出したのをみたときには、親の様な気持ちで感動しましたよ。

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ベル

植物と同じ様に、歯科医院という組織も、成長していくものなんですね。私はよくわかりませんけども。

第82回 植物の成長、医院の成長

 北国盛岡も6月ともなれば緑が萌え、すがすがしく気持ちの良い季節である。当院の植栽もいろどりを増し、賑やかになってきた。まずは寒さに強いロシアンオリーブが可憐な花を咲かせ、やせ細ってげんなりしていたクレマチスもつるを伸ばし勢いづいている。
 なかでも一番の注目株は、玄関に向かって右側のフェンス部分に位置するツキヌキニンドウである。昨春、副院長が誤ってちょん切ってしまったものだ。その後少し盛り返したのだが、秋を迎えると葉が枯れてしまい、「可哀そうなことをした…」とあきらめていた。それがこの春、新たにいきいきとした緑色のつるを伸ばし始めた。植物の根や茎には「成長点」という細胞分裂の活発な部分があり、そこから先端方向に向かい細胞が作り出され、茎や葉を伸ばしていくのだそうだ。死んだように見えたが、幸い「成長点」が残っており、力を温存しながら成長の機会をうかがっていたのかもしれない。クレマチスなど他の多年生植物も、いったん力尽きたように見えても、時期が来ると青々とその姿を変容させる。植物のその生命力には、恐れ入るばかりだ。(奥に見える緑色の葉がツキヌキニンドウ)
 当院は2010年の4月に開業し、12年目を迎えた。多くの方に支えられ、お陰様で概ね順調に診療してきた。しかし、10年目頃に、家庭の事情などでベテランスタッフの退職が重なり、実に大変な時期があった。「経験の浅い者だけでどうなることか…」と危惧したが、辞めるスタッフが後継者に、技術や知識とともに「大切にしてきた気持ち」も伝授してくれた。最初から同じようにふるまうのは無理だとしても、いずれいきいきと力を発揮するための「成長点」は残った。
 診療台3台、スタッフ5名で開始した当院も、現在はそれぞれ7台、16名(非常勤含む)となった。多くの「成長点」から各々枝葉を広げ、いろんなことが出来そうだ。それぞれの成長を損なわないように気をつけながら、支柱につるを固定し、全体の方向性を決定するのが私の役目。難しいがやりがいを感じている。(文 まじお)

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