第76回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖〜準備が成功のカギ

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、歯科医院を共に営む夫(真面目なのでここではマジオ君)とともに、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年から書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 必ず毎月、どちらかが書く。
2 内容は、歯科治療以外の事とする。

第76回 準備が成功のカギ

人工の壁面を登るスポーツクライミングをご存じでしょうか? 盛岡出身の伊藤ふたばさんが、日本トップクラスの選手として頑張っているので、岩手では認知度が高いかもしれませんね。登る高さを競うリード、登る速さを競うスピード、登り切った回数を競うボルダリングの3種目があり、東京オリンピックでは、これらを複合したコンバインドという採点方式をとるようです。選手により得手不得手があるため、勝者の予想が難しく興味深いところです。
 さて、3種のうち私が一番好きなのは、ボルダリングです。高さ数メートルの壁に指先しかかからない小さなものから、両手でも抱えきれないホールドが設定され、自らの手、足、頭脳を駆使して登りきることを目指します。各コース2分間のオブザベーション(下見の時間)があり、どこに手をおき、どこに足を掛けたらよいか、壁面を観察し考えます。事前の準備が成功のカギであることは、すべての物事に通じます。
 このオブザベーションで、私が感心していることが一つあります。それは、参加選手が攻略法を相談しながらやることです。試合において、ライバルに手の内を見せることは通常しないことです。個々の能力やコンディションは異なるので、その日すぐに役立つことはないかもしれません。しかし、自分と違う見方を知ることは、その後の試合や練習に必ずや生きるはずです。「みんなで更なる高みを目指す」、なんと潔く、高邁な姿勢でしょう。
 実は、我々の業界でも同じようなことはあるのです。私はさまざまなセミナーや勉強会に参加することで、患者さん毎に異なる状況に応じた治療を提供できるよう努めています。参加者は、同じ目的で集まる同志です。意気投合し、当日のみならず、後日メールやFacebook等で情報交換するような間柄になることもあります。コロナ禍でインターネットを利用した会が多くなり、顔を突き合わせての(ときには杯を酌み交わしながらの)濃いディスカッションができないのが物足らない今日この頃です。(文 まじお)

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