フロリダで僕も考えた 〜第47回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖
歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 かならず毎月、どちらかが書く
2 内容は、歯科治療以外のこととする
第47回 フロリダで僕も考えた
先月初旬、アメリカのフロリダ州を訪問した。
ドーソン アカデミーという歯科研究会のセミナーに参加するためだ。
歯科治療では、歯や歯肉にだけ目がいきがちだ。しかし本来は、顎関節や筋肉、咬み合わせ、スマイル等総合的に診査し、それらが調和した状態を確立することが望ましい。
そうでなければ、良い状態を長期に維持することはできない。この研究会では、そういった観点から診断法や治療法を研究している。
日本でも、浦和市の波多野先生が中心となり活動している。小生もその考え方に共感し、昨年からこの研究会に参加している。波多野先生の御尽力で、指導医に来日してもらいコースが開催されているが、最終総仕上げのコースは本拠地フロリダで行われる。
今回世界中から約 150 名が、日本からは 10 名が参加した。
コースは朝8時から夕方5時まで(最終日は 12 時まで)、バカンスを満喫している人々であふれるビーチ脇のホテルで3日間缶詰である。
しかし、内容は期待していた以上で、時差ぼけのはずが居眠りも出来ない(笑)。英語は苦手なのだが、テキストがしっかりしているので理解できた(講師のジョークと、質疑応答の内容は理解できず…)。
2日目の夜は懇親会が開かれ、参加者には全コースを修了した証として、主宰者ドーソン先生よりクリスタル盾を進呈頂いた。また、初日と最終日の夜も、日本からの参加者は特別に講師の先生を囲んで食事をすることが出来た。
最後に一人一人感想を述べた。私は、せっかくの機会を十分に生かすことが出来なかったこと、リベンジを果たすために英語を学習し直して、再度この地を訪問したいことなどを、片言の英語で話した…。
日本からの参加者同士でも、良く語り合った。
その中で印象的なことが一つ。一番若い先生が波多野先生に聞いた。「先生の歯科医師人生でのターニングポイントは何でしたか?」。
答えて曰く、「卒後2~3年目の時にあるトレーニングコースに参加した。終了し電車に乗りふと見上げると、同じコースに参加していた50才代位の先生が吊革にぶら下がりうとうとしていた。その頃の自分からはずいぶんおじさんにみえたその先生の姿に、歯科医師としてのあり方を見た」と。
ドーソン理論の真髄を日本に知らしめたいと、60才代半ばから資金持ち出しでドーソン アカデミー ジャパンを設立した先生。70 歳を過ぎた今も、恐ろしいほど精力的である。ドーソン先生は 88 歳。
やはり精力的に新たな課題に取り組んでいる。歯科医師としてあるべき姿を、実在の人物を通し再認識したフロリダ訪問であった。
文: 松浦 政彦